納税は国民の義務で、その金額を決めるための確定申告は重要な手続きです。もし確定申告を行わなかった場合は複数のリスクがあるため注意しなければなりません。
不動産売却益が出た場合に、確定申告をしないとどのようなリスクがあるのか、さまざまなペナルティがあることを知っておきましょう。
〇税務署が調査にくる
そもそもなぜ確定申告をしていないことがバレるのかですが、これは不動産取引で大きなお金が動いた場合は、税務署にチェックされる可能性が高いからです。
取引があり、大きな金額が動いたはずなのに確定申告がなされていないと、無申告の可能性があるとして調査されることが多いです。
税務署からの調査を受け、不動産売却の実態やそこで得た利益、確定申告をしていない事実などが明るみに出ると、税務署によって納めるべき税額を決められてしまいます。
税務署が決定する税額は、厳格な基準で定められているため、自分で申告した場合よりも課税額が大きくなる可能性があります。
また、基本的な税額に加えてその他ペナルティもあるため、確定申告をしていない状態で税務調査が入ると、普通に申告した場合の何倍や、何十倍もの金銭の支払いが必要なことは覚えておきましょう。
〇銀行の融資が受けられなくなる
事業をしている場合のリスクとしては、確定申告をしていないことで、銀行融資が受けられないことが挙げられます。これは確定申告をしないと、その年の決算書が正しく作成されていないからです。
決算書がないと事業としての信頼度が低くなり、融資を断られたり、すでに受けている場合でも打ち切られてしまったりする可能性があります。
また、決算書を偽って作成していることがバレると、今後の取引は一切できなくなる危険性もあるでしょう。加えて、銀行から税務署に通告がいき、確定申告をしていないことによるペナルティを課せられる可能性も上がるため、注意しなければなりません。
〇延滞税が課される
確定申告の期限を過ぎ、納税の期限を超過してしまうと、超過した日数に対して延滞税が課せられますが、延滞税は納税期限から2カ月は約7%、2カ月以降は約14%と高税率になります。延滞税は、申告をしても期限までに納付しないと課税されてしまうため、申告後は素早く納めることが大切です。
また、仮に期限を超過してしまった場合でも、より短期間で納付したほうが金銭的な負担は軽く済みます。納付をあとに伸ばすほど納税額も多くなるため、延滞してしまったことに気付いたなら、素早く精算することを心がけましょう。
〇無申告加算税が課される
そもそも、確定申告をしていないことに対してのペナルティもあり、これを「無申告加算税」と呼びます。無申告加算税は税額によって変化し、50万円までの部分には15%、それ以上の場合は20%の税率が加算されます。
たとえば、200万円の譲渡所得税を納税する必要があった場合、無申告加算税額は次のように計算します。
50万円×15%+(200万円-50万円)×20%=37.5万円
この場合、本来納税すべき200万円とは別に、37.5万円分を追加で納税する必要があります。
譲渡所得がある状態で確定申告をしないと、その時点で確実に15%以上も税負担が増えることになり金額が大きくなるほど加算税も高くなるため、少なくとも無申告にはならないように、きちんと期限までに申告するように心がけましょう。
〇事前申請をすれば無申告加算税は軽減できる
税務調査を受ける前に自ら申告すれば、無申告加算税率が5%に軽減できます。期限内に確定申告をしていなかったとしても、気づいたうちに早めに確定申告をおこないましょう。
【無申告加算税がかからない場合もある】
確定申告する期限を過ぎていても、以下の条件をすべて満たせば無申告加算税は5%すらかかりません。
・本来の申告期限から1月以内の自主申告である
・期限内申告をする意思があったと認められる場合
※「意思がある」の定義は国税庁が定めており、次のいずれにも該当する場合です。
※その期限後申告に係る納付すべき税額の全額を法定納期限までに納付している
※その期限後申告書を提出した日の前日から起算して5年前までの間に、無申告加算税又は重加算税を課されたことがなく、かつ、期限内申告をする意思があったと認められる場合の無申告加算税の不適用を受けていないこと
〇悪質な隠蔽には重加算税が課される
不動産の売却によって、明らかに譲渡所得があるにもかかわらず、確定申告をしなかったり所得を隠蔽した場合は「重加算税」が課せられます。
重加算税は悪質と認められる場合で、明確に定義が決まっているわけではありません。
しかし、故意に確定申告をせずに所得を隠そうとした場合など、申告の必要性を分かっていながら無視したときには、重加算税の対象になりやすいことは覚えておきましょう。重加算税の税率はケースによって異なりますが、35~40%と非常に重たいため、課税対象になると大きな税負担が待ち受けています。
〇申告内容を間違えたら過少申告加算税が貸される
過少申告加算税は、過少に納税額を申告していた場合に課される税金です。追加で10%課される税金で、過少に申告した金額が多かった場合には加算税の税率が上乗せされます。
ただし、自主的に申告誤りを修正した場合には、過少申告加算税は課されません。