農地の売却における主な注意点は次の5つです。
基本的に、農地の売却には数多くの制限がかかるので、最低限必要な売却の条件を押さえておきましょう。
1. 農地は農家または農業を始める人にしか売却できない
農地を売却できるのは、以下の人です。
・現役の農家
・これから農家を始める人
農地は農業をするために必須の資産であり、簡単に農地の売買を認めてしまうと、農家が減って国の食料自給率が下がってしまいます。
最低限の食料自給率を確保することは国策なので、農地の扱いや売買は「農地法」という法律で強力に縛られているのです。
そのため、基本的に農家ではない人に農地を不動産売却することはできません。
「これから農業を始める人」の対象条件も以下のように厳しく設定されています。
・農地を農地として活用できる
・年間で最低150日以上農作業する
・市区町村ごとに存在する基準以上の広さの農地を使って農業ができる
・近隣の農家に迷惑をかけない
農業1本で暮らしていく覚悟のある人、または現役農家で農地を拡大したい人しか、売却相手にすることができません。
2. 農地を売却する場合は農業委員会の許可を取る必要がある
農地を売却する場合、「農業委員会」という組織の許可が必要です。
農業委員会とは、農地法を基準に各農家や農地に対して指導をしたり、事務手続きをしたりする組織のことで、市町村ごとに存在します。
そして、農業委員会によって出される不動産の売却に関する許可は、「3条許可」と呼ばれるものと、「5条許可」と呼ばれるものの2種類です。
3条許可とは、農地を農地のまま売却する際に必要な許可のこと。
農地を将来の農家や知り合いの農家に売却する場合でも、農業委員会が売却を許可しなければ、売却手続きは白紙に戻ってしまいます。
一方の5条許可は、持っている農地を農地以外の土地として転用したうえで売却する際の許可のことです。
3条許可も5条許可も、基本的に農地法の内容で許可の可否が決まるので、農地を売るならできるだけ不動産業者や農業委員会等に相談しましょう。
3. 近隣に農地を欲しがっている人がいないと売却するのが難しい
先ほど説明した通り、農地を売却できるのは農家または本気で農業を始める人だけです。
現実的に考えれば、北海道で農業をしている人が宮崎の農地を買っても管理できないので、農地を農地のまま売却する場合は近所の農家へ売却することになるでしょう。
ただし、近隣の農家が農地を広げたいと考えているかどうかは相手次第です。
残念なことに、日本の農家も高齢化や後継者不足といった深刻な問題を抱えています。
農地の拡大どころか、跡継ぎがいない、体力が衰えてきたなどの理由で廃業や農地の縮小を考えている人も少なくありません。
「農地を買いたい」と考えている人が単純に少ないので、農地を売却する場合はどうやって買い主を見つけるかが大きな問題になってきます。
4. 農地は一般的な土地に比べて圧倒的に単価が安い
農地の売却における注意点として見逃せないのが、取引価格の安さです。
基本的に、農地は農業をするためにしか使えない土地なので、購入しても活用することができません。
一般的な土地の価格は、購入後の自由度(空き地と建物つきの土地なら空き地のほうが様々な用途で使える)と立地によって価値の大半が決まります。
建物を建ててビジネスや住まいとして利用できない農地は、農業用途でしか使えない時点で大きなハンデを抱えているのです。
また、農地は税制の優遇も受けているので、宅地を始めとした普通の土地よりも維持費がかかりません。
買い主の少なさ、利用用途の狭さ、維持費の安さといった複数の要因から、農地は一般的な土地よりも安い金額で取引されています。
農地を売ってもあまりお金にならないことは、あらかじめ知っておきましょう。
5. 不動産業者によって仲介手数料が大きく変わる場合がある
土地を売却する際に不動産業者に仲介を頼んだ場合、「仲介手数料」という費用がかかります。
仲介手数料は、「宅地建物取引業法」という法律で内容や上限額が決められた支払いです。
本来、宅地建物取引業法が想定しているのは、名前の通りあくまでも宅地の取引だけなので、「農地」の売却手続きに仲介手数料のルールを持ち込む必要はありません。
しかし、実際には慣習として、農地の売却にかかる費用も仲介手数料の額を基準にするのが一般的です。
ルール遵守の義務がない以上、具体的な金額は契約する不動産業者によって変わってくるため、「農地の売却にいくらかかるのか」は不動産会社と媒介契約を交わす前に聞いておきましょう。