相続で空家を取得し、売った方が良いのは分かっているんだけど、なかなか踏み出せない…。という方は多いのではないでしょうか。
空家は持っているだけで何かと損をしやすい不動産です。空家で資産をマイナスにしたりトラブルに巻き込まれる前に売ってしまいましょう!
空家を売りたい方のための基礎知識や売却する際にかかる費用を抑えるコツなどを解説します。
【目次】
1. そのままの状態で売却する
空家をそのままの状態で売却すると、解体をしないので出費費用を抑えることができます。
土地や建材の値上がりにより新築の価格が値上がっている今、古い家を購入し自分でリフォームをしたいと考える買主も多くいます。古家付き土地で販売すればそのような買主もターゲットに入ります。
しかし、古家付き土地がいつ売れるかは分かりません 。建物の状態が悪い場合は、売却活動中に一部が損壊してしまったり、空家に不審者が入ってしまうといったリスクも考えられます。
空家に不審者が入ったり、今以上に劣化しないように定期的な管理が必要になるでしょう。
【築20年以内なら中古住宅で販売】
空家の築年数が20年以内なら中古住宅として販売する方法が良いでしょう。
築年数が経っておらず、リフォームなど必要なく今すぐ住める場合は空家としてでなく中古住宅として販売することが可能です。土地だけでなく建物にも価値をつけて販売することができるので、土地だけで売るよりも高く売れる場合が多いです。
築年数によって資産価値は変わりますし、築20年以内でないと原則住宅ローン減税を受けられないこともあり、築年数は浅ければ浅いほど高く売れる可能性が高いです。
築10年以内で探す買主は多いので、現在築9年目の空き家の場合はなるべく早く売却活動を始めた方が良いでしょう。
築20年以上経ってしまい、古家となってしまったら古家付き土地として販売するのが良いでしょう。
前段でも解説しましたが、築20年以上経過してしまうと建物の価値はほぼゼロになってしまうことが多く、中古物件として販売してもライバルの中古物件に負けてしまう可能性が高くなります。
中古物件として販売してもライバルに勝てず売れ残り、築年数を重ねてしまうばかりになっては余計売れなくなってしまう可能性が高いので、最初から土地をメインとした古家付き土地として売却するのです。
ただし、築20年以上でも家の中をリフォームなどしている場合は、そのまま中古物件として販売できる可能性が高いです。築20年になってしまったばかりの家は古家付き土地で売るのか中古物件で売るのか判断が難しいところ。早めに不動産業者に相談して、どちらの販売方法にするのか相談した方が良いでしょう。
空家を解体し土地を更地の状態で売却する方法です。更地は買主が解体費用を追加で支払わなくて良い、土地を取得してからすぐに家を建てられるなどのメリットがあるので、古家付き土地より買主が見つかりやすいと言われています。
古い家を解体してしまうので、空家が原因でトラブルに巻き込まれる心配もなく、必要以上のメンテナンスがいらなくなります。
しかし、土地を更地にするにはお金がかかります。家の建築方法や建材などによって異なりますが、相場は100万円以上。さらに、土地は家が建っていると最大1/6固定資産税が安くなりますが、更地の場合そのような減額がありません。 売却期間が長くなれば負担も大きくなるでしょう。
家の劣化が激しく、倒壊の恐れやリフォームに多額の費用が必要になるような空家は更地にして販売するのが良いでしょう。
一部損壊していたり劣化が激しい家をそのままにしておくと倒壊の恐れがあり、売却活動中に行政から指導が入る可能性があります。また、劣化の激しい家や草木が伸び放題の庭は買主に良い印象を与えられません。
劣化の激しい空家は更地にしてしまい、売却期間が長引かないようにしましょう。解体費用はかかってしまいますが、更地の売却価格に上乗せすることは可能です。
家を解体する際は事前に再建築不可の土地でないか確認をしましょう。古い家が建っている土地の場合、昔の法律では家が建てられたのに、今の法律では家を建てることができない土地というものがあります。
そのような土地の場合、家を壊してしまうと新しく建物を建てられないので、土地の価格が大きく下がってしまいます。空き家が所在する地域の役所へ行けば調べられるので、解体する前にまずは役所に相談してみましょう。
多くの方は空き家を相続で取得します。この相続をする段階で空家に住む予定がないのなら、すぐ売ってしまいましょう。空家は持っているだけで維持費がかかりますし、管理の義務が発生します。使わない空家は持っている時間が長ければ長いほど費用がかさんでしまうのです。
もし、相続をしてすでに1年以上経ってしまっている場合は3年以内の売却を目指しましょう。不動産を相続する際に相続税を支払っている場合、被相続人(亡くなった方)が死亡した日から3年10ヶ月以内に不動産を売却すると取得費加算の特例が使え、売却時に発生する税金を安く抑えられる場合があります。
ここでは、どのような費用税金がかかるか・どうすれば安く抑えられるかを解説します。
【譲渡所得税】
譲渡所得税は空家の売却額が取得金額より上回り利益が出た時に発生する税金です。支払う金額は利益に税率をかけて算出しますが、税率は空家を所有(相続の場合、空き家を購入してから)してから5年以上の場合は(長期所有)税率15%、5年未満の場合(短期所有)なら30%となります。
【相続登記費用】
もし、空き家を相続した後に自身の名義に変更していない場合は、相続登記が必要になります。
相続登記とは不動産の名義人を変更するもので、法務局に必要書類を提出して申請します。物件の売却をできるのは、基本的に物件の名義人のみとなるので、売却活動の前に相続登記の手続きが必要になるのです。
相続登記に必要な費用は書類の取得費・登録免許税・司法書士への依頼料です。各種費用は以下の通りになります。
書類取得費:5000円~2万円
司法書士への依頼料:3~8万円
【仲介手数料】
仲介手数料とは不動産業者に仲介で物件の販売を依頼し、売買が成立した際に払う報酬のこと。
仲介手数料の上限は法律で定められており、多くの不動産業社が上限で請求します。場合によっては値引きしてくれることもありますが、基本は表通りに仲介手数料が発生すると考えておきましょう。
【解体費用】
その他に発生すると考えられる費用は空家の解体費用です。空家の解体費用は家の広さや建材、周辺環境などによって変わるため一概には言えませんが、戸建てに多い木造建築で3~4万円/坪が相場。
その他に塀や庭の木などの撤去、住宅が密集した場所なら防音シートの設置費用などが発生し、100万円以上はかかるでしょう。
空家を売却する際には、なるべく費用をかからないようにすることで、自己資金を持ち出さないようにすることができます。空家の売却金額で売る際にかかる費用をまかなえるようにし、自己資産がマイナスにならないように気をつけましょう。
空き家を売却し空き家の取得金額より売却金額が上回った場合、利益を得たということになり、譲渡所得税の支払いが発生します。この時、利用できる控除が被相続人の居住用財産(空家)に係る譲渡所得の特別控除の特例です。
この特例を利用すれば、譲渡所得を最大3000万円までが特別控除となります。つまり、3000万円以下の利益は譲渡所得税を支払う必要がなくなり、3000万円以上でも3000万円を引いた額に税金が発生するので節税になるのです。
具体的な計算式は以下になります。
譲渡所得 = 売却価格 - 取得費用 - 譲渡費用 -3000万円
ただし、この特例を利用するには、下記の条件などを満たしている必要があります。
売却する際には、耐震リフォームが施工されていない場合は行う、もしくは更地にするかのいずれかを行います。
〇築年が昭和56年5月31日までに建てられた一戸建てである
〇使用者が相続開始直前まで被相続人(親など)が自宅として1人で使っていた家である
〇利用状況が相続してから空き家の状態であること(賃貸などの使用履歴がある場合はNG)
〇売却額が1億円未満である
〇相続を開始した日~3年後の12月31日までの売却である
〇その他行政から要件を満たしたことの証明書が発行されている
空家や古い家を売却する際、多くの人が「リフォームした方が良いのでは…」と考えますがリフォームの必要はありません。
リフォームをするとなると、フルリフォームで数百万円の費用が必要となりますが、リフォーム代をそのまま家の販売額に上乗せすることは難しいです。なぜなら、全額上乗せしてしまうと、相場額から大きくずれてしまい買手がほとんどつかないからです。最初は高値で広告したとしても、なかなか売れず値下げをしなくてはいけなくなってしまうでしょう。
また、前段でも解説した通り、古い家や空家などの購入を検討している人のなかには購入後、自身でのリフォームを考えています。その人達にとってみれば、購入前にリフォーム済であっても魅力的にはうつりませんし、その分販売価格が値上がっていると思えば手を出す人は少ないです。無駄にリフォームをして買主候補を減らしてしまうのなら何もしない方が良いでしょう。
空家の状態が悪い、なるべく管理の手間を減らしたいなどの理由で空家を解体しての売却を検討している方もいるでしょう。その時、調べておきたいのが空家解体の補助金です。
各市区町村によりますが、空家を解体する際、条件を満たせば解体費用の一部に補助金を出してくれるところがあります。空家が所在する地域にそのような制度がないか、事前に調べておきましょう。
方法としては直接役所に連絡をするか、インターネットを利用し「市区町村名 空家 解体補助金」などで検索すると調べられます。
空家を解体し更地での売却を検討している人もいるでしょう。空家を解体する際にはできるだけ家財道具などは解体前に処分しておきましょう。
よく、解体してしまうのだから家の中に物を残しておいても良いだろうと考える人がいますが、解体した後のガレキが多いほど解体費用は上がってしまいます 。
カーテンやエアコンなどは自身で処分した方が安上がりなので、事前に処分しておくと良いでしょう。まだ動く家電や状態のいい家具などはリサイクルショップなどに引き取ってもらう方法もあります。
なかには大きな木製の家具など自身で処分するより一緒に解体してもらった方がお得な物もある ので、事前に解体業者に聞いておくと良いでしょう。
空家を売却する際にはいくつか注意しておきたいことがあります。場合によっては空家の売却ができないこともあるので、スムーズに行うためにも確認しておきましょう。
【空家の名義変更ができているか確認を】
空家の名義人が自分になっているか確認を行いましょう。
空家を含む不動産を売却する場合、売却できるのは名義人である本人だけです。空家の名義人が被相続人(亡くなった方)のままだと、空家の売却が行えません。
もし、まだ空家の名義人になってない場合は名義変更を行いましょう。名義変更を行う場合は、必要な書類と登録時に発生する税金、登録免許税を持って法務局で申請をします。
法務局の申請は平日のみで、書類の記入や準備には手間がかかります。確実に終わらせたいという場合は司法書士に依頼すると良いでしょう。
【価格を設定する時は少し高めに】
空家の販売価格を決める際は少し高めに設定しましょう。
家の売却額が決まる際、買主は必ず値下交渉をしてきます。売主はこの値下げ交渉に多少なりとも対応するのが一般的。つまり、この価格交渉に対応しても損をしないように、最初から販売価格は少し高めに設定しておくのです。
また、空家や古い家などの場合はなかなか売れないことも多く、一度販売を辞め価格を下げて再度売り出す場合もあります。そんな時にも価格を少し高めに設定しておけば、すぐ値下げに踏み切れます。
最終的にかかる仲介手数料や税金、諸経費などを考えると空き家といえどあまり安く売ってしまうのは得策ではありません。売却額で手数料などを補い、自己資金を出さなくても良いようにしておきましょう。
元空家という印象は買主にとってあまり良くないですし、古い家ならば建物に劣化が見られるのでなかなか買主は見つかりづらいです。
通常、家が売れる期間は3~6ヶ月と言われていますが、空家の場合はそれ以上かかると考えておきましょう。地方の場合でも時間をかければ売れる可能性はあります。売れない期間の固定資産税や維持費をなるべくかけないように対策だけはしておき、焦らず売却活動を行いましょう。
空家を売りたいけど「やることが多くて大変そう」「売却なんてやったことなくて難しそう」なんて思って売却に踏み出せない方もいらっしゃるでしょう。
そんな方は早くに不動産業者を味方につけてしまうのがおすすめです。不動産業者は売却活動のパートナーです。早めに頼って売却を助けてもらいましょう。
空家など不動産の売却が初めての場合、不動産業者のいいようにされてしまうのでは…と不安に思われる方もいますが、それは大きな勘違い。不動産業者は売却額の数%を手数料としてもらうことで利益を得るのが主です。
つまり、売主と一緒に売却活動をし、空家を高く売れば売るほど不動産業者も大きな利益を偉るということ。不動産業者は売主の売却をサポートし、より良い売却活動にすることで利益を多く得られるのです。
そのため、売主が分からないといえば教えてくれますし、売却方法に迷った時は相談にのってくれます。分からないことを自分で調べたりするのはとても骨が折れる作業です。
早めに不動産業者に相談をし、プロの知恵を借りた方が空家の売却を楽に進めることができるでしょう。
不動産業者は頼れる存在ですが、どこでも良いというわけではありません。信頼できる不動産業者を探し出すのが重要です。
残念ながら不動産業者のすべてが頼れるというわけではありません。街を見渡しても分かるように、不動産業者は数多く存在します。この中から信頼できる不動産業者を探し出しましょう。
不動産業者の力量を調べられるのは査定です。不動産業者に査定依頼を申し込んだ際にすぐ動いてくれるか、査定結果の理由を明確に伝えられるか担当者や不動産会業者の対応をチェックしましょう。
空家は一般の中古住宅より年月が経っている場合も多く、築5年などの家に比べたら売るのが難しく利益も出しづらい案件です。
そのような物件にも素早く対応してくれるということは、その後の売却活動中も真摯に対応してくれる可能性が高いでしょう。