農地の売買の最大の障害となるのは、農地法です。
簡単に言うと、農地は他の土地とは異なり、売却するのにお上の許可を得なければなりません。
農地は国の食糧を生み出す大切な土地であるため、農地が減少することは国の死活問題となるというのが農地法の根底にあります。
しかしながら、現状では農地が減る以上に、農業就労人口が激減していますので、現状と法律が噛み合っておらず、法律が厄介な存在になっています。
〇農地を売却や転用するときの規定
農地法は、売却もしくは用途の転用に関して、以下の規定を設けています。
規定がそれぞれ農地法の3~5条に記載されているため、3条許可、4条許可、5条許可と呼ばれています。
3条許可・・・AからBへ農地を農地として売却すること農業委員会
4条許可・・・自分で農地を農地以外に転用すること都道府県知事または指定市町村町
5条許可・・・AからBへ農地を農地以外に転用して売却すること
簡単に言うと、農地を農地として売る場合は3条許可が必要となります。
農地を農地以外に転用して売る場合は5条許可が必要となります。
4条許可に関しては、売却せずに自分で農地を別の用途に転用する場合の許可になります。
〇市街化区域の農地は例外規定がある
ただし、ここで用途転用に関する4条許可と5条許可には例外があります。
市街化区域における農地については、用途転用に関しては「農業委員会への届出」だけで良いという例外規定があります。
市街化区域とは、都市計画法で定められる「すでに市街化を形成している区域またはおおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域」です。
市街化区域は、主に人が多く住んでいる都市部に定められています。
市街化区域は、「どんどん人が住む街(市街化)してください」というエリアであるため、農地を、建物を建てるための宅地に転用することはウェルカムなわけです。
よって、市街化区域では、用途転用に関しては単なる届出だけで良いということになります。
例えば、市街化区域内の農地を、AさんからBさんへ転用目的で売却する場合は、届出という簡単な手続きで済ますことができます。
しかしながら、農地を農地として売却する3条許可に関しては、農業委員会への許可が必要となります。
農地法は、発想として農業に従事する人が変わることを嫌がります。
人が変わると、収穫量も変わってしまうためです。
例えば、専業農家の人から農業経験のないサラリーマンに農地を売ろうとすると、許可が下りません。
サラリーマンに売ってしまうと、実質、農地が減ってしまうことになるため、ちゃんと農業をできる人でないと、売却の許可が下りないのです。
ここで、農地法の規制を受ける農地とは、どのような土地を指すのかが問題となります。
まず、農地は現況主義で判断されます。登記簿謄本の地目は関係ありません。
登記簿謄本の地目が山林となっていても、現役バリバリの農地なら、それは農地法の対象となる農地です。
一方で、耕作放棄地はどうでしょうか。実は、耕作放棄地の農地法の対象となる農地です。
※耕作放棄地とは、以前耕地であったもので、過去1年以上作物を栽培せず、しかもこの数年の間に再び耕作する考えのない土地のこと
一時的に休耕しているものとみなされ、農地法の対象となります。
現況主義なのですが、なぜか休耕地は農地です。実質的には、耕作放棄地の売買は非常に多いです。
相続で引き継いだ畑や、実家の田んぼ等は、ほとんどがこの耕作放棄地に該当しているためです。
耕作放棄地は農地法の対象となります。
市街化区域以外の土地であれば、転用目的の売却でも許可が必要ですのでご注意ください。
逆に、家庭菜園の土地は、現役バリバリであっても農地ではありません。
現況主義と言いつつ、家庭菜園は一時的な利用形態であるとみなされます。